神奈川県横浜市のマリーナに停泊している船舶空調機用のチラ-の修理を造船会社から依頼されました。
空調用チラーがまったく作動しないとのことでした。
この船舶の空調の仕組みは、本チラーで冷却した水をポンプにて各船室のファン付きの冷却器に循環するものです。
本チラーは冷媒ガスの凝縮(液化)のための冷却に海水を使用しています。
「海水」で嫌な予感。皆さんもご存じのように海水は塩分を含んでおり、金属を激しく腐食する性質があります。
冷媒ガス圧の確認をしようとサービスポートにゲージマニホールド(圧力計)を付けたところ・・・・・水が・・・・出てきました・・・(T_T)。
これは、
①海水による金属腐食により凝縮器内で冷媒漏れが発生↓
②冷媒が少なくなり冷媒回路内の圧力が下がる↓
③ポンプによる水圧が冷媒の圧力に勝ってしまい冷媒回路に海水が流入
となってしまったためです。
実は、冷凍機は冷媒回路に水が入ると致命的なダメージを受けてしまうのです。冷媒回路内に水分が少しでも残っていると、それが回路内で凍ってしまい、回路詰まりが発生し機能しなくなってしまいます。
こうなると、完全に冷媒回路内を乾燥させる必要があるのですが、船舶の機械室の中では部品を取り外すことも困難です。
さらに問題は、海水に含まれた塩です。水分を乾かしても塩は冷媒回路内で析出するため、これを取り除くのは不可能に近いのです。
やむなく、修理不可の判断をし、ユニットごと一式の交換の必要がある旨報告しました。
水冷凝縮による冷凍機は、コンパクトにできるのですが、このような水分流入により修理不可となるリスクがあるのです。
空冷式、水冷式、共に一長一短がありますね。
↑白く塗られたらせん状に巻かれた配管が水冷凝縮器です。冷媒と海水との2重管構造となっています。